セラ改造指南道場 10章 コクピットノススメ1


クルマを運転するドライバーは、運転席に座ってシートベルトをし、ステアリングとシフトノブを持ち、アクセルとブレーキとクラッチを踏んで、前や後ろや横を見てクルマを操作します。運転する人によって趣味趣向も違えば、体格・体力・スタイルも当然さまざまです。メーカーがそのクルマを発売した状態で提示してきた「コレ!」という標準品に、イマイチ納得がいかないのは当然のこと。それをなんとかしたいと思うのも当たり前。自分らしく。もっとおもしろく。もっと大事に。ここにアフターパーツ市場があんなにも繁栄する理由があります。
そこで、セラの運転席(かっこよくコクピットと言っておきましょう)を自分に合わせて、あれこれ部品を替えてみたり、追加したりしてみましょう。手によく馴染むもの、ビシッと決まった逸品など取り付けたりすると、運転が楽しくなることうけあい。
まずは身体が接するところからです。



1.シート

セラの純正シートはとてもコンパクトです。ぼちぼちの体格の人ならホールド性が決して悪くないと感じるはず。(管理人はレカロSR−3よりも純正のほうが優れていると思います)しかし、それは上半身の話。いわゆる座面部分はなんとも普通。「日本車の典型的短所はシート」を地でいくような、2時間も座れば腰が痛くなる、不満の残るシートなのです。
さて、前期型ともなると、もうシートなんてボロボロになってきているのではないでしょうか?汚れやシワ、破れ、型くずれにガタつき。DIYによる補修はさておき、シートの修理や交換はもはやトヨタのデーラーでは対応不可能。
そうなると、純正は車検などの緊急用に保管することにして、社外品に交換するほかありません。しかし、やはり稀少なセラゆえに、シートを交換するのにもなかなか思いどおりにいかなかったりするのです。

アフターパーツで交換用シートと言えば、筆頭はドイツの医療工学シート「レカロ」です。EP91スターレットグランツァVやSW20型MR−2、ホンダタイプRシリーズ、ダイハツコペンなど、本格的なスポーツ系モデルでは新車装着も可能でありました。単品で買おうとすると、昔は1脚10万超えなんてザラでしたが、日本国内をレカロ本社が直接押さえるようになって以降、たいへんお求めやすい価格で手に入るようになりました。
ほかにも、古くからモータースポーツなどで採用されるブリッドが筆頭その2。また各有名チューニングブランドからも出ています。外来ではスパルコ。そのほかチューニングショップなどのノーブランド物も含めると、百花繚乱の様相です。
さて、こういった社外品シートを買うと、ほんとにシートの部分しかありません。交換するにはシートをクルマに固定する「レール」を別途購入しなければなりません。マイナー車のセラはこの部品がわずか3社、レカロ、ブリッド、ジュラン(うちブリッドとジュランは同jじ製造元と思われる)からしか出ていませんので、おそらくシートとは別途で、どれかのものを購入して取り付けることになります。

さて、社外品のシートで純正同様リクライニングする(背もたれの角度を調節できる)タイプを考えます。これらのシートは作り込みが純正よりも相当よく、座面の厚みも倍ほどはあります。そのため、取り付けて座ってみると、視点が高くなってものすごい違和感を感じると思います。(すぐ慣れます)頭の上のガラスとの隙間も、ゲンコツ1個入るかどうかというところでしょう。背の高い人は当たってしまうかも知れません。膝とハンドルの感覚も狭まるため、ここも接触してしまう可能性も。リクライニングシートを入れる場合は、こういった座面の問題があるため、シート及びレールのチョイスに気をつけなければいけません。買ってしまう前にオフ会、ミーティングなどでいろんなシートに座らせてもらって、実際の感覚を確認できるといいです。

続いて背もたれが倒れない一体固定のバケットシート(フルバケ)の場合。こちらは座面も薄く、シートの固定方法も横からのボルト止めが大半で、リクライニングタイプのような問題は基本的に起きないと思われます。しかし、標準の定員4名の場合、事故の時などの乗員保護のため、前席シートの背面は衝撃吸収構造になっている必要があります。たいていのバケットシートは買った状態ではFRPのシェルがむき出しになっているので、このままでは車検の時に怒られてしまいます。大手メーカーの製品ならカバーやパッドがオプションで用意されているので、必ず装着しましょう。

作業難易度 ★☆☆☆☆(1/5)
交換は思いの外簡単です。セラはシートベルトのバックル(差し込み口)がフロアから生えているので、シート交換の際に気にしなくていいんです。ドアを開ければ天井部分までぽっかり空きますから、シートの出し入れも他車よりラクです。まずシートを前方へスライドさせ、レール後端にある14ミリのボルトを外します。今度はシートを後方にスライドさせ、レール前端にある同じく14ミリのボルトを外します。結局は前後どっちからでもいいです。レールの足は尖っているので、クルマから取り出す時にボデー等に当てると、10円パンチを喰らった並の傷跡と悔しさですからご注意。取り付けるシートはレールに組み付けておき、前後どちらかに少しスライドさせておきます。シートを慎重に車内に入れ、ボルトの穴の位置を合わせます。ここでボルトをとめていくのですが、フロアカーペットがねじ穴に噛み込みやすいので、シートを取り出した際にねじ穴周辺のカーペットを少量切り取っておくことを強く推奨します。特に前側の車両中央よりの方。外した時と同じ要領でボルトを固定します。



2.シートベルト(社外複数点式ハーネス)

サーキットでの走行会などに参加するつもりでしたら、ぜひとも4点式ベルトの装着をおすすめします。シートの交換に関係なく、です。スポーツ走行をする時には、上半身はシートに縛り付けられているくらいでないと、コーナリング中の踏ん張りや左右の振り回しで身体が持っていかれてしまいます。数周走っただけで横っ腹が痛い、なんてことにならないよう、専用のセーフティハーネスを用意した方がいいでしょう。サベルト、ウィランズ、日本のタカタなどから出ていますが、基本的に汎用です。2シーター用として少し短いのがあるくらいです。

さて、この後付けのベルトは車の法律(保安基準)でいうところの「シートベルト」とはみなされず、あくまでもアクセサリー扱いです。何がどうなると「シートベルト」なのかはここでは述べませんが、公道で4点ハーネスを締めて走るのであれば、車両標準のシートベルトも重ねて着用することになります。追突などの事故の時には、乗員が前後左右に吹っ飛ばされないことが第一であって、車両標準シートベルトでもそんな緊急事態には申し分ない効力を、古くなっても発揮します。しかし、上半身をしっかりと支える4点式の方が、正しく装着していれば、性能としてかなり優れていると言えます。強力すぎて食い込みそうです。しかしながら、どんな事故が起きるとも知れませんが、横転時にドアが開けられないセラにとって、巻き込み機構のない4点式ベルトが絡まったりすることがあれば、脱出にはデメリットになるでしょうし、駆けつけた救急隊員が4点式ハーネスのリリース方法がわからないというトラブルも考えられます。バックル部が車両標準シートベルトと同じようなものもありますが。

作業難易度 ★☆☆☆☆(1/5)
車両側に接続・固定する金具部分の形状によって取り付け方や難易度も変わってきます。まず、4点式ハーネスを取り付けるにあたっては、後部座席はほぼ荷物置き場専用となってしまいます。というのも、セラの場合は後席シートベルト取付部分を流用することになるからです。ちょっと人が座るにはなんともジャマくさいシロモノですので、座れないとか座っちゃいけないわけではありませんが、避けるようにしましょう。腰(腹部)に左右から取り回す方のベルトは、運転席シートレール固定ボルトの後ろ側を使って固定するとよいでしょう。ちょっと純正シートだと難しいかも知れません。無理でしたら、右側は運転席標準シートベルト下側の車両取付ボルト、左側はシートベルトバックル(差し込み口)の車両取付ボルトが使えるかも知れません。社外シートレールの場合、左側はレールにバックル取り付け用の穴があると思いますので、それを使うのもよいでしょう。両肩にかかる方のベルトは、シート背もたれの穴を通して後席シートベルト固定部分まで持って行きます。この肩のベルトが頭の後ろくらいの位置でつながっており、車両側と固定するのが1箇所だけで済むタイプのハーネスもあります。そのタイプは後席ベルトのバックル側のオスのボルトを使うとよいでしょう。2箇所なら車両外側のベルト側のネジ穴も使います。

さて、固定する場所はこんなところですが、金具の形状についてです。前後席純正シートベルトのように、三角または四角の金具にボルトを通す穴が開いているタイプなら、純正ベルトやレールのボルトに共締めするのは難しくないと思います。が、むしろこのタイプはマイナーで、一般的な後付けベルトは上のサンプル写真のように、いわゆる「ナスカン」のようなフック状になっているのが大半です。これを車両側と接続するために、L字アンカーやアイボルトといった、引っかけるための穴が開いているパーツを別途用意する必要があります。



3.ステアリング(ハンドル)

運転中はずっと触っているし、どうもノーマルだと味気ないのがステアリング。ところが、安全装置や電子デバイスが跋扈する平成の世、エアバッグ、オーディオコントローラ、ハンズフリー通話スイッチ付きのハンドルが新車では常識となり、つくりも良くなって、交換できない、またはする必要もないため、ハンドル交換はもはや死語になりつつあります。それが古いセラとどう関係するかというと、もう用品店などで売ってないんです。中古市場などではまだまだあふれていますが、やはり痛んでいるモノが多く、あまりオススメできません。これから買おうと思っても、店頭で現物を確認できないのは致命的です。
また、セラの標準ステアリングはどうにもホーンが鳴りにくい。ボタン部分全体が押せるようになっているかと思いきや、真ん中のトヨタマーク周辺しか押してもへこまず、スイッチが接触しないんです。鳴らしたい時に鳴らせない。そんなの意味ないジャン。あれを何とかしたい人も、ハンドル換えましょう。

シート交換にレールが必要であるように、ステアリング交換には「ボス」というものが必要です。ステアリング自体は汎用ですから、それぞれ専用設計である車体との橋渡し役が欠かせません。各車種専用と思いきや、トヨタ車は新旧問わず大体同じつくりをしています。セラで適合が取れているものを入手できれば何も言うことはありませんが、他車用でも必要な機能を満たせば問題なく、むしろ個人的な好みも満たせるかも知れません。必要な機能とは、ホーンが鳴ること。右左折後にウインカーが自動で戻るかや、ハンドルを持った時のウインカーレバーまでの距離が、ものによって異なってきます。

さて、ステアリング選びの際の注意点ですが、あんまり小径のものは車検に通らないと言われます。これは小さいから通らないんじゃなくて、メーターが見えなくなるからです。ヴィッツだったらどんなに小さくてもメーターには関係しないのでオーケーとなりますが、さすがにどこかで限界はあるでしょう。ホンダS2000でVGSという可変ギアレシオ機構を装備したモノがありますが、あれはステアリングがD字型です。ラウムはわずかですが楕円形状です。必ずしも真円形状でなくてもいいのだろうと思われますが、ナイトライダーのように明らかに取り回しに難があるモノは危ないです。ホーン(クラクション)については、必ず鳴らなければいけません。セラは純正ステアリングの裏側にホーンリングという丸い端子があり、車体側からのプラスの線をホーンのスイッチまで渡しています。取り付けるボスも正しく端子が接触できるホーンリング付きの物でなければいけないわけです。音を鳴らすスイッチがホーンボタンですが、ステアリングとセットで交換することになります。ここにも必要な物がありまして、あのラッパのマーク。ここを押せばホーンが鳴ると明示してある必要があります。ボタンの絵柄によっては付いていないモノもありますので、その場合は手書きでもシールでもいいので付けて下さい。

作業難易度 ★★☆☆☆(2/5)
交換だけなら星ひとつなのですが、正確に、車両直進時のセンター出しをキッチリやるのが意外と難しい。バッテリーのマイナス端子を外しておいた方が、火花が散らなくて精神衛生上も良いでしょう。まずは車を直進状態にします。純正ハンドルなら真っ直ぐの状態でいいでしょう。純正ハンドル下側にあるネジを1本外すとホーンボタンが外せるようになります。下からめくるようにすると外しやすいようです。ハンドル裏のホーンリングから来ているプラスの線がホーンのスイッチまで伸びてきているので、コネクタを外します。ステアリング真ん中に大きなナットが止まっているので、タイヤ交換用のクロスレンチ等でこれをゆるめます。決して外してしまわないこと。ゆるめたら、ハンドルを力一杯手前に引っ張ります。コレが固いんです。それでもあまり左右にグイグイやらないこと。せっかくの直進状態が崩れてしまいます。抜ける時は急に抜けます。事前にナットを外してしまうと、抜けたハンドルで歯を折ることになるので、繰り返しますが外さないこと。ゆるめただけのナットがストッパーになるんです。
ハンドルを取り外したらまずボスを差し込みます。おそらく「上」マークが付いていますので、正確に合わせます。ここでスッキリ気持ちよく運転できるか、違和感バリバリになるかが決まります。差し込んだらナットをきつめに締め、ホーンリングから来ているプラスの線をホーンボタンに差し込み、皿ネジでステアリングとボスを固定させて終了です。バッテリーのマイナス端子を戻し、ホーンが鳴ることを確認。かるく実走して直進時にステアリングセンターが狂っていないか、右左折後ウインカーレバーが自動で戻るかを確認して下さい。


2006.6.4