セラ改造指南道場 9章 止ノススメ


クルマのキホン、それは走る、曲がる、止まる。どんなにパワーがあってものすごい加速をしても、どんなにくるくる回っても、速度を落として停止することができなかったら、タダの危険な鉄のカタマリ。何にもなりません。止まるという要素がイチバン大事です。
その「止まる」を強化、または維持するために何ができるか、何をすべきか。



1.ブレーキパッド

最もお手軽なチューニングであり、かつ消耗品であるから何度も交換を経験することになるのがブレーキパッド。純正はもうはっきりと公道での使用を前提としているので、エンジンかけていきなり走り出してガツンと踏んでも、みるみる前に進んでいく、なんてことはありません。そのかわり、サーキット等で攻める走りをすると、思い切り踏んでもなかなか速度が落ちず、コーナーで飛び出したり、そうならないために相当手前から踏み始めなければいけなかったりします。ブレーキパッドには性能が最もよく発揮できる適正温度域があるので、ノーマル(純正相当)は公道(高速道路含む)で使う時に達するであろう温度範囲でよく効くようになっているわけです。
これをもうすこし適正温度が高く、かつ熱交換効率の高いものに交換すると、急ブレーキなどでビックリするくらい身体がシートベルトに食い込むほどになることもあります。いわゆるスポーツパッドというもので、用途やメーカー、値段によりさまざま。サーキット・レース専用などは逆に適正温度が高すぎて、街乗りでは効きがイマイチ以下のものもあります。サイフと相談しつつ、自分の主な用途に合わせて選ぶことが大事。また、効きの良いパッドほどブレーキダスト(ブレーキ時にパッドが削れてでる粉)がやたらと多いんです。メーカーやラインナップの上下でもその量は変化しますが、ダストはホイールに付着していくので、もしホイールが銀や白の場合、気が付くと濃いブロンズか黒に色が変わっているほど。効きを取るかダストの少なさを取るか、よく考えましょう。ちなみに、近年のちょっとしたコダワリ車はメーカーの新車純正装着のものでも、ダストや寿命を犠牲にして効きの良さが重視されています。
さて、セラのフロントパッドはスタタボと共通。リヤドラム車もEP82NAなどと共通で、チューニングパーツへの交換に困ることはないでしょう。しかし、リヤのドラムブレーキシューはそもそも社外品がほとんど出ていないのですが。
ブレーキ強化で手軽にできるといえばこのパッド交換くらいであり、あとはどうしても費用のかかる大技になってしまいます。



2.リア ディスクブレーキ化

セラは新車注文時にABSをチョイスしない限り、リヤはドラムブレーキとなってしまいます。セラのABSは初期のタイプで、ドラムブレーキには装着が難しかったんでしょう。当時としてもまだ世間が飛び付くような商品性もなかったことから、世に出回ったセラのほとんどはリアドラムです。ブレーキシステム全体はスタタボと共通ということで、EP82より少々重めのセラにも充分な制動力を持っているとはいえ、夏場のサーキット走行などで、しかもサイドブレーキ引いてリヤを出すなんてことを繰り返せば、熱が逃げないドラムブレーキの効きが持続するとは言いがたいです。それに、なんといってもアルミホイールの見た目。今の時代、ちょっとスポーティを謳うクルマはいずれもリアはディスク。
これを改善するために、共通であるABS付きセラやスタタボの、リアアクスルをまるごと移植するという手があるのです。単純にドラムをディスクにすることは構造上できず、ブレーキ部分がくっついているその部品自体を交換します。サイドを含めたブレーキのラインすべてもディスク用に交換します。冒頭でも言った、クルマで最も大事な「止まる」の大加工、勝手知ったるプロショップにしかるべき費用を払って、全てを任せるべきです。
リヤをディスクブレーキにしたところで、制動力がいきなり良くなることはありません。実はむしろ逆です。



3.スリット入りディスクローター
ディスクブレーキで、パッドと触れ合うことになる部分がローター。ホイールと同時に回転しており、ペダルを踏むと油圧でパッドが押さえつけられ、摩擦が発生します。運動エネルギーをこの摩擦で熱エネルギーに変換し、クルマが減速するのです。このローターにはスリット、つまり溝がはいっているものが社外品に存在します。ブレーキパッドはディスクの表面を削るので「パッドがあたる面積」自体は減少しますが、ディスクの「表面積全体」は大きくなりますし、ブレーキダストや熱を排出する効率があがり、制動力の向上につながるわけです。現在のローターをはずして加工するという手もありますが、長く使ってきたのならいっそのことリフレッシュも兼ねて、最初からスリットが入っているモノに交換してしまった方がイイでしょう。フロントはEP82ターボ初期型近辺の254(または253)ミリ品が、共通であるセラにそのまま使用できます。リアはスターレット用でもスリット入り等が発売されていません。
また、外車のいわゆるスーパーカーくらいになると、ディスク面に穴が開けられているものがあります。ドリルドローターと言いますが、スターレットクラスだとワンオフするしかありません。酷使するとディスクが割れる要因になりますので、オススメしません。


4.ブレーキフルード
標準ではDOT3という規格のものが使われますが、パッドやホースなどを強化品に交換したら、ひとつ上のDOT4相当のものに交換しましょう。交換サイクルは車検ごとで充分ですが、まる1日サーキットを走ったりすると、沸騰したりエアを噛むこともあるので、アツい走りのあとにも点検や交換を。スカッと抜けたら前のクルマやガードレールに一直線です。チューニングカーむけにDOT5規格のモノもありますが、あれはレース用。シール類などゴム部品に与える影響が大きすぎますので、日々公道を走る車には使わないで下さい。


5.ABSについて
いま新車を買えば必ずABSは装備されています。軽自動車にさえ標準になろうかというほど技術が進み、システムのコンパクト化も著しいです。そして、ハッキリ言ってセラくらいクルマが古いと、装着されるABSも古いので、付いてない方が良いと思います。なんといっても制動距離の増加はいただけない。ガツンと止まりたいのにズルズル進んでは何にもなりません。ほいでもって、エンジンルームにあんな大きなユニットが鎮座ましまして、DIYに邪魔ったらありません。ただでさえ重いフロントがもっと重くなります。
新車を買うなら標準だし、性能も良いのであるに越したことはないのですが、昭和の設計のセラには無用の長物。ブレーキ性能が上がるものでもありません。ABSが必要になりそうな状況、環境下では慎重に走れば良いんです。タイヤやブレーキに普段から気をつけて、クルマが変な挙動に陥らないように運転する。これでいいです。
昔はABSが付いていると、安全装備として自動車保険がほんの少し安くなりましたが、装備しているのが当たり前の現代、契約車両が古いからと言ってまだ安くなるのでしょうか?次回更新時にちょっと気にしてみて下さい。



6.その他
ブレーキホースの交換やマスターシリンダストッパーの取り付けは、フィーリングやコントロール性の改善には有効であるものの、絶対的な制動力のアップをもたらすものではありません。ディスクの大径化、キャリパーの大型化等々、ワンオフや流用加工でなんとかすることはできるものの、やはり失敗するととんでもないことになる「止まる」のチューニングは慎重になりがちなのか、セラでブレーキをチューンする人は稀です。とりあえずパッドを高性能にすればよく止まるようになるので、少ないおこづかいは別のところへ、という人が多いようです。ブレーキはセラに限らずどの車でもチューンの方向性は同じであるし、半年に一度くらいは特集が組まれる内容なので、チューニング雑誌を参考にして進めていくのもよいでしょう。共通のスタタボを探せばいろいろな手段が見つかるのではと思います。


7.タイヤ
もちろんタイヤだって制動力に関係しています。ひどく消耗していたり、およそ似つかわしくない性能の低いタイヤ(イマドキそんなのありませんが)を履いたりして、開発者、設計者の想定外の状態だったら、止まるものも止まりません。タイヤが実際に路面と接しているのはハガキ1枚分で、それが4輪。もしそのタイヤが最低限の基準以下だったら……。何度も言いますが、「止まる」ということがクルマでは一番大事なことなんです。


2006.6.4