セラ改造指南道場 7章 補強ノススメ


シャシーはスターレットと同じであるセラですが、オールオリジナルとなるボデーは、ヤワいんです。見ての通り、ほとんどガラスですから。

セラで各部分を強化していくと、やがては必ずここにブチ当ります。「ボデー剛性がない!」
そりゃそうです。ボデーの上半分はほとんどガラス。ガラスでは強度は出ません。また、ボデー強度を語るときはドアやガラスを除いて考えますから、上まで回り込んだ大開口ガルウイングドアと、ガラスハッチを外してしまったら、クルマの前と後ろをつないでいるのは、いわゆるサイドシル(横っ腹)の部分と、天井の細いタテのフレーム、しかもこいつは円弧状のBピラーとつながってT字となり、わずか3点でボデーフレームと結合しているだけなんです。もう、オープンカー並み。セラの本当の兄弟車はサイノスコンバーチブルではないでしょうか?
そんなやわらかいセラですが、共通であるスターレットやサイノス等でいくらか流用できる補強系パーツはあります。ですが、やはりボデーは専用。何かしようとすればワンオフになってしまいます。
もちろん、古いクルマですから、大切に、大事に乗ろうというのであれば、メーカーの設計した純正ノーマルのままがいちばんです。こういった補強というものは、どこかに実施すればたいてい違う箇所に少なからずの影響が及び、やがては逆にクルマを傷めることにもなりかねません。皆さんが自分のセラのどこをどうしようと勝手ですが(管理人もいっぱいやってますし)補強を実施する際にはよ〜く考えてほしいと、老婆心ながら思っております。



1.ストラットタワーバー フロント、リヤ

補強パーツの定番、タワーバー。まずはフロントです。これはクスコやGABなどから出ています。中古品なら各社のものが出回っていますので、どれでも好みで選ぶとよいと思います。スターレットはインタークーラーがエンジンのすぐ上にあるため、これをよけるようにタワーバーも設計されます。そのため、同じシャシーのセラにも付かないことはないのですが、ボンネットとの干渉が懸念されます。エンジン型式がおなじサイノス・タコ2用がベターチョイスで、セラと品番を同じにしているメーカーが大半です。このタワーバーはエンジンルームのドレスアップにもなります。
取り付けは、平坦な場所でいわゆる1G状態で行うのですが、本来なら引っ張り具合などシビアな調整が必要で、実はただつけただけではダメなんです。できればショップなどで、と言いたいところですが、そこまで丁寧にタワーバーを付けてくれるところなんて無いです。

続いてリヤ。こちらはセラ用としてラインナップしているものはありません。が、そこは共通、スターレット用が装着可能です。しかし、加工が必要です。スターレット用をそのまま付けようとすると、リヤのサスペンション取付部の張り出しと干渉してつけられないことがわかります。実はこの張り出し部こそ、トヨタ自動車がスターレットのシャシーをセラに流用するにあたり、あまりのボデーの違いから補強を入れた部分なのです。車体側を削るわけにはいかないので、タワーバー側を加工して下さい。また、製造メーカーや太さによってはシートバックの固定ができなくなるので、この場合取り付けはやめて下さい。また、シートバックが固定できた場合でも、その後ろにあるトランクとの境目のボード(ルームパーティションボード)はちょうどバーの通り道になるため、撤去することになると思います。
取り付けようとするリヤのタワーバーが3ピース式の場合、比較的内装の被害は少なくて済みます。3ピースというのは、左右のサスペンションのアッパー取付部×2と、それをつなぐバー部分に分離できるものを言います。この場合の取り付けは、内装をはがしておいて取付部だけを先に固定しておき、そこへ内装を戻して、左右にバーを渡すのに必要な部分と、取付部が内装に干渉する部分だけを切り取ることで、最低限必要な部分だけの加工で済みます。タワーバーが1ピースの非分割タイプの場合や、内装をチマチマ切るのが面倒な人はズドンと大穴を開けましょう。リアはフロントにくらべても効果を感じやすいと思います。ハッチバック車はリヤにバルクヘッド(後部座席後ろとトランクの間の車体隔壁)が無いので、結合されることで剛性のアップが顕著です。しかし、トヨタ自動車の設計はこんなつっかえ棒なんか無いことが前提になっているということをお忘れ無く。足回りと合わせたトータルで考える必要があります。

セラに限らず、タワーバーを装着することによるデメリットですが、左右を結合することで、事故時の片側の衝撃が、本来関係ない反対にまで及ぶこと。右側をぶつけたのに左側までゆがんでしまい、治らず廃車、ということも。

フロントタワーバー 作業難易度 ★☆☆☆☆(1/5)
なるべく砂地などを避け、平坦な場所に車をとめます。アッパーマウントのナット左右4箇所(モノによっては8箇所全部)を外して装着します。クスコ製のは調整式なので、突っ張りすぎず、取り付けに支障のない程度に合わせて下さい。もしアッパーマウントのネジに引っかかる場合、フロントをジャッキアップするとネジが沈んでいくので、全長分落とさないよう上げる量には気をつけ、取付部をあてがいます。ジャッキを降ろせば穴からネジが出てくるはず。製造メーカーによるが、取付後、オイルフィラーキャップの上部をバーが通るので、オイル交換の作業性が落ちます。オイルじょうごは柔軟性があるから何の問題もないんですけど。またクスコ製はボンネットとわずかに干渉する場合が大半です。ほんの少しですので気にしないか、裏面の骨を少し叩いてへこませるなどの対策を講じても良いでしょう。

リヤタワーバー 作業難易度 ★★★★☆(4/5)
リアの内装を外します。そのためには後席も一式外します。ちょうどシートバックの固定フック付近の位置に穴を空ける必要があります。被害を最小限にするためにも切っては合わせ、切っては合わせの根気の要る作業。左右を結合するシャフトの径が25φほどなら、スピーカーボード、リアシート固定フックならびにシートバックいずれも通常使用できそうです。 40φクラスになると、3つとも諦める必要があるでしょう。それはつまり定員2名公認車でなければ取り付けられないということです。



2.発泡ウレタン充填

フロントバンパーを外す機会があったら、正面からクルマを見てみて下さい。左右にダクトらしき深い穴があいています。どこかにつながっている?と思われる方もいると思いますが、あいにくとそういう構造ではありません。これはフロントサイドメンバーと言います。このように車には中空になっているフレームの箇所が多々あります。ガルウイングドア下端が接するボデー側、サイドシルという部分もそうです。ここに発泡ウレタンというもの(初めは液体)を注入・充填してやることで、すぐにそれが固形化し、ボディ剛性を飛躍的に向上させる、という方法です。ただし、サビるという噂もあります。本来密閉された空間であるサイドシルに、ウレタンを流し込むための穴を開けるワケですから場合によっては雨水が浸入し、やがてサビとなります。うまくやればそれほど心配するほどのことでないのかも知れません。ただし、いっぺん充填したら最後、あとからほじくり出して元に戻す、なんてことはできません。さらに、充填した箇所を事故等でツブしてしまった場合、修理が大変になると聞きます。
さて、実際の作業ですが、そんなに難しいことはしません。ホームセンターなどでも売っている、2液式等の発泡ウレタンを買ってきます。容器に入れてかき混ぜ、すぐに注入。すぐに発泡が始まり、ものすごく膨張するらしいです。どれだけ注入するか、あらかじめ見当をつけておかないと、エラいことになりそうです。セラだと、漏れてくる場所があるそうです。ガムテープ等で塞いでおかなくてはいけないようです。で、コレはけっこう体感できる効果があるみたいです。多少の重量増には目をつぶりましょう。ここ数年でけっこう一般的になってきたボデー補強策ですので、チューニングショップに依頼するのが安心でしょう。今では充填できるのはサイドシルだけでないようで、セラの場合ルーフやBピラーなど、上半分をどうにかできたら、ずいぶんマシになるのでないでしょうか?しかし、セラをもう一台買えるほどの費用がかかります。



3.ロールバー、ロールケージ

俗称ジャングルジムとも言います。走り屋、およびそれ系車両の定番パーツです。ちなみにバーをフロントまで巡らせてカゴ上にキャビンを囲ってしまうのがロールケージ。車内のリア室内のみに取り付け、フロントシートへの乗降に影響を与えないものをロールバーというそうです。
もちろん、どこを探したってセラ用の設定はありません。上の写真もロードスター用です。が、所詮はパイプの組み合わせ。ワンオフで製作することは可能で、定番それ系以外のよっぽどの車種が、現車あわせのワンオフのようです。セラですと、やはりEP82、またはEP71をベースにすることができ、1からのワンオフというわけではないので、まだ救いがあります。ところが、写真のような4点とかのレベルだとそれほど剛性に影響を与えるものでもなく、せいぜい乗員保護性能がアップするくらいだったりします。オープンカー用の価格が安めのものなどは、取り付けてサーキット走行のための車両条件を満たすレベルで、合成アップは…というようなものも。(アンチ・ロールオーバー・バーの略かも?)
でも冷静に考えてみたら、遠回りしすぎなタワーバーですよね。これが7点や8点とか、パイプがナナメに横断したり、点数が二桁を越えてくるようなら、がっちりとボデーを動かさない、剛性のカタマリみたいなものができるでしょう。そのかわり、鉄製のパイプですから、けっこう重いんです。点数が増えれば増えるほど、パイプがあちこちに渡る量も増えるわけですから、重量も増します。フロントにまでもってくる場合、せっかくのガルウイングの大開口による乗降性のよさも失いかねません。普通の横開きドアみたいに乗り込むんですよ?剛性の獲得以上に軽さやセラらしさを失うデメリットは大きいかも。そして、当然ですが、ロールケージを組むなら後部座席、ならびにリヤ周辺の内装は諦めなければいけないでしょう。国家という壁を越えなければならない改造になってしまいます。


4.スポット増し
というのもあります(^_^;)執筆中、ということで。


2006.6.4